児童書のおすすめ(11月25日)

書名 しょめい : たまごのはなし

著者 ちょしゃ : しおたに まみこ/作  

出版社 しゅっぱんしゃ : ブロンズ新社


 表紙に鎮座するのは、手を組み絶妙な表情でこちらを見つめるたまご。この物語の主人公です。
 長いことキッチンでじっと動かずに転がっていたたまごは、ある日突然立ち上がってみることにしました。頭を一口かじってみたことがきっかけで仲間になったマシュマロと、たくさんの初めてを経験します。「当たり前」を押し付けてくる植木鉢の口にテープを貼ってみたり、気ままなたまごたちを羨む、「大事な仕事」がある時計の電池を抜いてみたり。そうすれば仕事をせず休めるから、というたまごの言い分が辛口で爽快です。
 長い間、転がっていて動く素晴らしさに気付いたばかりのたまごに先入観なんてものはありません。本当に困ったたまごだとマシュマロが言うように発言や行動には少し毒があるけれど、その哲学にはハッとさせられる大切なことが詰まっています。
 ほぼ鉛筆で描かれた薄暗い絵の中で繰り広げられるたまごたちの不思議な日常を、あなたも覗いてみませんか?