2020年12月の記事一覧
9月13日のおすすめ
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0歳の頃、母親と一緒に国立音楽院のコンサートに行ったユージ。そこでユージは、フルートと衝撃的な出会いをする。それから5年後、天性の才能を認められ、難関の国立音楽院に入学したユージ。しかし、どんなに本気で目指しても、プロになれるのはたったひと握りだけ。そんなクラシック音楽界の厳しさを目の当たりにしたユージの決断とは…。
クラシック音楽界を題材に、15歳の少年の将来への迷いや挫折、それらを乗り越え成長していく姿を描いた青春音楽小説です。
この本の題名である『アドリブ ad lib.』は、ラテン語の「ad libitum」の略で、「自由に」を意味する音楽用語だそうです。また、作中ではクラシック音楽が多数登場するため、音楽用語やクラシック音楽の知識がある人は、より一層楽しむことができる作品となっています。作中で登場する曲を聴きながら、読んでみるのも面白いかもしれませんね。
9月6日のおすすめ
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作者は佐賀県出身(しゅっしん)で、初めて書いた小説『高安犬(こうやすいぬ)物語』で直木賞(なおきしょう)を受賞(じゅしょう)しました。動物の小説が多く、犬の物語が特に面白く感じます。
主人公キバの母は狼(おおかみ)、父は猟犬(りょうけん)で北海道の大雪山(だいせつざん)に生まれた野生犬です。生後6か月のとき、川に流され滝壺(たきつぼ)に落ちたところを女学生の早苗(さなえ)に拾(ひろ)われ、かわいがられて成犬になります。しかし見た目が狼のキバは、いつまでも早苗と一緒(いっしょ)にはいられませんでした。
キバは狼としてサーカスでは虎と、見世物小屋では闘牛(とうぎゅう)と戦う日々を送ります。早苗以外の人に関(かか)わると辛(つら)いことばかりです。
作者は一生の間には嬉(うれ)しい、悲しい、がっかりすることがあり、困難に打ち勝って人(犬)の成長が成(な)し遂(と)げられると語っています。
中学生に向けて書かれたこの小説は、漫画やアニメにもなりました。50歳以上の人は知っているかもしれません。『戸川幸夫動物文学全集』もお薦(すす)めです。
作者は、「イリオモテヤマネコ」を発見したことでも知られています。
8月30日のおすすめ
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ペンギンって寒いところにしか住んでいないと思われがちですが、実は暖かいところにもいるって知ってましたか? 現在確認されている18種類のペンギンはすべて南半球で暮らしていますが、その場所は南極大陸から赤道直下の熱帯までと様々です。
ペンギンをよく知らない人にとって、18種類を見分けるのは至難の技。どのペンギンも同じに見えてしまうのかもしれません。今回紹介する『ペンギンは短足じゃない図鑑』は、そんなペンギン初心者さんにこそおすすめしたい一冊となっています。
作者はSuicaのペンギンをデザインされたことでも有名な、イラストレーターのさかざきちはるさんです。各ペンギンの特徴をしっかり捉えたイラストと簡潔でユニークな説明文に、ペンギンへの興味を掻き立てられること間違いなしです。
さかざきさんはこの本以外にもペンギンの絵本を多数執筆されていますので、機会があればそちらも手に取ってみてください。
8月23日のおすすめ
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会社で嫌なことがあり、仕事を辞めて引きこもっていた、ねこのこふじさん。そんなある日、とねりこ通りに住むおばあちゃんから、世界旅行に出かける間、家のるすばんを頼まれました。家賃の代わりは、月に一度その月らしい行事をして、手紙で知らせること。
最初は誰とも関わりをもとうとしなかったこふじさんでしたが、4月はお花見、5月はころもがえ、6月はウメ仕事、7月は七夕と行事を重ねるごとに、とねりこ通りの住人と仲良くなっていきました。住人の温かさに触れるうちに、こふじさんの心の傷もだんだんと癒されて、ふたたび前向きな気持ちを取り戻すことができたのでした。
四季の移ろいを楽しみながら交流を重ねる、ねこのこふじさんととねりこ通りの住人の1年間を描いた、心温まるおはなしです。
自分はひとりぼっちだと感じている人はいませんか?
そんな時は周りをよく見てみてください。きっとあなたを優しく見守ってくれている人がいるはずですよ。
8月16日のおすすめ
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ある日、届いた不吉な手紙。そこには離れて暮らす兄が碁の会で口論となり殺害されたという内容でした。弟の判右衛門(はんえもん)は息子の判八(はんぱち)を連れ仇討ちに行くことに。ところが失敗したあげく思わぬ悲劇が彼らを襲います。
この本には表題作を含め7つの物語が収録されています。江戸時代の小説家井原西鶴の作品を軸に現代の人々に分かりやすい言葉にし、短い物語に肉付けされています。井原西鶴は庶民の姿をありのまま、冷静に観察することができました。この物語にはほぼハッピーエンドがありません。人間の欲望やこっけいさ、ずる賢さなど人間のネガティブな側面が書かれています。
人が持っている悪い面を否定することなく淡々と表現したこの作品は人間の奥深さを感じさせます。江戸時代の古典で手に取り難いけれど、読み始めるとすぐに物語に引き込まれます。
最近、わくわくする楽しい物語に飽きてきたな、人間の裏側を少しだけ覗いてみたいなという方におすすめです。