小中学生へおすすめ!
8月9日のおすすめ
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どこかの国の森の湖のほとりで人知れず死んだ兵士。彼は一時間前生きて戦っていました。八時間前は仲間と朝食をとっていました。二日前は、一年前は…。
ページをめくるごとに時をさかのぼって兵士の過去を知っていくうち、ひとりの人間が死んだということがしだいにリアルに感じられます。「こんなはずじゃなかった」と思いながらも戦地へ行かざるをえなかった彼の無念さを思って暗たんとした気持ちになります。
残酷な描写はなく数分で読める白黒だけのシンプルな絵本ですが、読んだ時間の何倍も死んだ兵士について考えてしまう、そんな本です。
もし、あなたがこの兵士だったとしたら、どう行動したでしょうか。ぜひ読んで考えてみてください。
8月2日のおすすめ
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物語の主人公は、小学6年生のぼくと川辺と山下。あることをきっかけに「人が死ぬところを見てみたい」という好奇心を抱いた3人は、もうすぐ死ぬと噂されている、一人暮らしのおじいさんを見張ることにします。しかし、ある時おじいさんに気付かれてしまい、ついに少年たちはおじいさんと言葉を交わします……その後、どんな結末が待っているのかは、読んでみてのお楽しみです。
少年たちのとんでもない好奇心から生まれたおじいさんとの夏の思い出は、少年たちの心を大きく変えることになります。
生きるって何だろう。大人になったら、年を取ったら、一体どうなってしまうのだろう……。
将来の夢やこれからのことで悩んで、少し難しく考えてしまった時、おじいさんと少年たちの物語を読んでみると、なんだかちょっとだけ、スッキリするかもしれません。
7月26日のおすすめ
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故郷のアラバマを離れ、父さんと二人でシカゴに引っ越してきたラングストン。大好きな母さんを亡くし、学校では南部の田舎者といじめられていました。
そんな時、偶然見つけた図書館。アラバマでは、黒人は図書館に入れてもらえないと教えられていましたが、そこは、だれでも利用できる図書館でした。
ラングストンにとって図書館は、たったひとつの心が休まる場所になりました。そこで彼は、自分と同じ名前の詩人の本と出合います。その本には、まるで自分の気持ちを表したような、美しい言葉が並んでいました。
それから、ラングストン自身や彼を取り巻く環境は、大きく変わっていきました。黒人にとってまだまだ差別が残っていた時代、図書館は大きな希望を与えてくれたのです。
学びの場であり、癒しの場であり、感受性を刺激してくれる場所である図書館。ラングストンのように、夢中になれる何かを探しに、あなたも図書館に出かけてみませんか。
7月19日のおすすめ
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この本は、いい年をしたおっさんの「ぼく」と、「ぼく」の家にやってくる、おとなになるまえの「きみ」の物語です。
学校で先生から「ことばがなってない」と言われた「きみ」。テストで「作者の気もちが、わかっていない」と言われた「きみ」。家にやってくる「きみ」の話を聞いて、「ぼく」は様々な詩を紹介します。そして「きみ」は夏休みの自由研究で、詩を書くことにしました。
詩や、物語や、音楽、絵画……同じ作品でも、出会う時期によって違うものに感じるときがあります。そのときの自分にとって、心に響く詩に出会えたとしたら、それはずっとあなたの支えになるかもしれません。
大人になって、子どものときの出来事を忘れても、読んだ詩を忘れても、心の響きは残るのではないでしょうか。
詩がわからなくても大丈夫。でも、ふたりのやりとりから、わかろうとすることは大切なことだと感じられます。まずはこの本の詩をじっくり味わってみてください。
7月12日のおすすめ
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これまでに新種の恐竜を9種類発見した小林博士。「化石が好きなのであって、恐竜自体に関心をもっていたわけではない」少年時代から、なぜ恐竜博士と呼ばれるまでになったのでしょうか。この本にはけっして順調ではなかった道のりが書かれています。
流されるまま決めた大学時代のアメリカ留学。ホームシックにかかり、さびしさを忘れようと遊びまわります。けれど内心あせりがつのるばかり。帰国してから本当に自分がやりたいことは何か考えます。
恐竜学者になってからも様々な苦労が絶えませんが、小林博士は前向きに乗り越えていきます。例えばどれだけ探し続けても化石が見つからない時、みなさんはどう感じるでしょうか。普通なら弱気になる場面で、小林博士は「発見なし」でも喜びに変わると言います。その理由は……ぜひ読んで確かめてみてください。
恐竜が好きな人だけでなく進路に悩んでいる人、自分を見つめなおしたい人にもおすすめの1冊です。
7月5日のおすすめ
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新学期がスタートして約2カ月。環境が変わり、不安に感じている人も多いのではないでしょうか。今週は肩の力を抜き、自然体で生きる術を語った中国の古代思想家「老子」の言葉を集めた本をご紹介します。
老子が生きていたと思われる春秋戦国時代は、鉄の生産が広まり社会が急激に発展した時代。果てしない生存競争に、疲れを感じる人も多かったようです。そんな人たちに、老子は流れる“水”のように自然のはたらきに逆らわず、ありのままの自分で柔らかく生きることをすすめます。
二千年以上前から、今の私たちと同じように、とまどいながら生きている人たちがいたと考えると何だか面白いですね。あなたが迷ったり悩んだりしたとき…。ぜひ古典を手に取ってみてください。本の中に、数千年の時をこえて、誰にも話せないことを語り合える理解者が見つかるかもしれませんよ。
6月28日のおすすめ
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小学三年生のマキシとおむつをしている弟のレオンは、パパとママがお出かけのため、大学生で一人暮らしをしている兄トミーのアパートで一週間生活することになりました。
両親と離れて暮らすなんて初めてです。そこでは、兄のアルバイトのお手伝いをしたり、大学の講義に参加したりと冒険のような毎日が待っていました。トミーは、朝寝坊で、パパやママとは違いますが、二人のお世話をしてくれます。兄弟だけで生活するうちに、マキシは、食器洗いやお掃除などお手伝いができるようになりました。弟レオンは、新しいことばを覚え、紙おむつをはずし、トイレに行くようになりました。これは、たった一週間のうちに起こった出来事です。
両親と離れて、ホームシックになっても、いろんな体験を通して成長していく子どもの姿が描かれています。年の離れた仲良し三きょうだいのてんやわんやだけどにぎやかな一週間をのぞいみませんか。
6月21日のおすすめ
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世界で一番有名な名探偵といえば「シャーロック・ホームズ」です。1887年に登場してから、130年以上、世界中の人々を魅了し続けています。
シャーロック・ホームズが初めて登場したのが、この「緋色(ひいろ)の研究」です。ホームズが、相棒のワトソンと出会い、最初の事件に取り組みます。不思議な事件、謎解き、意外な犯人、と、読むとワクワクすること間違い無しです。
「緋色の研究」、どういう意味なのか、読んで確認してみてください。小中学生の皆さんが読みやすいように、イラスト、漫画が豊富に加えられています。当時のイギリスヴィクトリア朝のロンドンの雰囲気も味わえますよ。
この本をきっかけに、ぜひ、広くて深いミステリ(推理小説)の世界に飛び込んでみてください。
6月14日のおすすめ
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いま、日本人の2人に1人はがんという病気にかかるといわれています。
がんは、がん細胞というものが体の中で生まれ、それがどんどん増えることで生じる病気です。もしかすると、あなたや家族、身近な人ががんとたたかっていたり、これからがんになる人がいたりするかもしれません。
この本の主人公もその一人。ママががんになりました。お花にハートにリボン…色とりどりのママの髪飾り・バレッタ。ママは、抗がん剤という薬を使った治療をしていて髪の毛が抜けてしまい、いまはバレッタを使うことができません。
とっても悲しいことだけど、髪の毛がなくても、ママはママ。ママには、生きていてほしい。それに、抗がん剤の治療が終わったら、またちゃんと髪は生えてきます。それまではウィッグや帽子でおしゃれを楽しめるしね。
この物語は、がんになったパパやママの体験がもとになっています。あなたもこわがらないで、本を手に取ってみてください。
6月7日のおすすめ
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自分が生まれ育った国、故郷(ふるさと)からどこか遠くに逃げなければいけない。そんなことになったら、あなたはなにを思うでしょうか。
この物語はそれぞれの事情で故郷を追われ、難民とよばれる存在になった3人の少年少女が登場します。
1939年、ナチスによるユダヤ人への迫害から逃れるため、キューバに向かおうとしたヨーゼフ。1994年、キューバでの苦しい生活と抑圧から逃れるため、アメリカをめざしたイサベル。そして、2015年、シリアでの爆撃により自宅を失い、危険から逃れるため、ドイツをめざしたマフムード。
3人の道のりはどれもつらく厳しいものです。そんな3人の運命が時を超えて交差するとき、あかされる真実とは…。
このお話は物語です。しかし、私たちの世界には確かにヨーゼフやイサベル、マフムードのような思いをしている人たちが大勢いるのです。その事実を知ることが、彼らに寄り添う心を持つ第一歩になるかもしれません。
5月31日のおすすめ
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国語辞典をつくる人を、「ことばハンター」というそうです。この本は、そんな辞書の仕事をする作者が日々、生き物をつかまえるように新しい言葉を見つけていくエピソードがたくさん出てきます。例えば、街に出て読めない漢字の看板を見つけると、写真を撮っておき、字の読み方や意味を知ろうとします。さらに、新しい言葉を発見したら、辞典に載せられるかどうかを見極め、自分の表現で簡潔な説明文をつくります。
最近は「やばい」「ハンパない」という言葉をよく使うようになりましたね。こういう現代言葉も国語辞典には載っています。
辞書をつくる過程が、クイズ形式で書かれているので、考えながら楽しめる本です。言葉の世界にどんどん惹き込まれていくことでしょう。
世の中は、本やインターネット、テレビや新聞などいろいろな情報にあふれています。身近にある言葉の意味を、一緒に考えてみませんか。
5月24日のおすすめ
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大阪市にある「おおさかワンニャンセンター」には、春から秋の間、たくさんの子ねこがやってきます。みんな、のらねこや捨てねこです。センターでは、子ねこのお世話をしながら、新しい飼い主をさがす仕事をしています。でも、母ねこのかわりにうまれたばかりの子ねこを育てるのは、人間にはとてもむずかしいことなのです。センターの職員さんたちは、もっとも世話のかかるちのみごを助けるためにはどうすればいいか、ずっと考えていました。
ある日、動物病院の獣医さんたちから、「センターにやってくる子ねこを協力して一緒に助けよう」という提案が持ちかけられます。こうして子ねこの命のバトンが獣医さんにわたり、「命のリレー」が始まりました。
かわいい子ねこの命を守るために、たくさんの人が命のバトンをつないでいます。わたしたちはどうやってその「命のリレー」に加わることができるだろう、と考えながら読んでみてください。
5月17日のおすすめ
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良い男目当てで、運動部のマネジャーを志望した女子高校生の咲良。部活の見学に行く途中、咲良の前を一人の男子が走り去ります。男子の走る姿に目を奪われた咲良は、その男子の後を追いかけますが、マネジャーの直に阻まれてしまいます。直の冷たい態度に、入部を諦める咲良でしたが、なぜか直の推薦によって半ば強引に陸上部の、リレー専属マネジャーとして入部をすることに…。
陸上部に入部することができた咲良でしたが、陸上についての知識も無く、直が怖かったこともあり、最初はあまり乗り気ではありませんでした。しかし、部員との衝突や自分自身との葛藤などを経験していくうちに、マネジャーの存在意義を知り、大きく成長していき…。
文武両道の青嵐学園高校の陸上部4×100mリレーを舞台に、リレーに全力をかける高校生たちと、ひとりの女子高生の成長を描く1冊です。
5月10日のおすすめ
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家族と離れて、いなか町のコルビーに暮らすこととなったチャーリー。一緒に生活するのは、これまで顔を合わせたこともなかったおばさん夫婦のバーサとガス。チャーリーは戸惑いを隠せず、2人や、クラスメイトのハワードに冷たく当たってしまいます。
ある日、チャーリーは、のら犬を飼う決心をします。帰る場所がないのら犬を自分と重ねたのかもしれません。ウィッシュボーンと名付けたのら犬との出会いが、チャーリーにとって大きなものとなります。
居心地の悪さを感じていたチャーリーですが、周りの人々の優しさに触れる中で、心を少しずつ開いていきます。毎日幸運のしるしを見つけて、願いごとをしているチャーリーのほんとうの願いは叶うのでしょうか?
不安をいっぱい抱えていたチャーリーの心の動きに注目しながら読んでみてください。
5月3日のおすすめ
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5月3日は憲法記念日です。今から73年前、1947年(昭和22年)の5月3日から今の日本国憲法がスタートしました。
憲法にはどんなことが書いてあるか知っていますか?原文(もともとの文章)は難しい日本語で書かれていますので、難しい内容が書かれていると思っていませんか?じつは難しくなく小学生でも理解できる内容なのです。
天皇について、国民の権利や義務について、戦争について、憲法にはどんな風に書いてあるのか、原文と意味を比べながら読んでみてください。「へえーそうだったのか!」と憲法を身近に感じられるはずです。
日本で暮らす全ての人が日本国憲法という大きなルールのもとで暮らしています。憲法記念日という大切な日に、憲法について考えてみましょう。
4月26日のおすすめ
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スポーツクライミングは、垂直にそり立つ壁をホールドとよばれる突起物をつかみながら手と足のみで最上部まで登りきるスポーツです。みなさんはこの競技に視覚障害者がクライマーとして参加していることを知っていますか?
けがでスランプになったクライマーのあかりと視覚障害者の昴。偶然の出会いから、第一印象最悪同士がペアを組み、ブラインドクライミングに挑戦することになります。お互いの考えが理解できずけんかばかりの二人でしたが、少しずつ相手に本音を伝えることで協力して取り組めるようになります。
丁寧に会話を重ねること、相手の気持ちを思いやることの大切さが全編をとおして伝わってくる作品です。果たして二人は目標とする大会で壁を登りきることができるのでしょうか。
2020年東京オリンピックではスポーツクライミングが正式種目に選ばれました。この本でひと足先にクライミングの世界をのぞいてみませんか。
4月19日のおすすめ
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メディアリテラシーとは、新聞やインターネットなどのメディアから得た情報を、正しさを見極め、理解し、活用する能力のことです。これは大人になればだれにでも自然と身についている能力――ではありません! 流れてくる情報を正しく読み取るには練習が必要なのです。
この本は、わたしたちが見聞きしている情報が、実は全体のごく一部でしかないのだと、目で見てわかるように作られているのが特徴です。
ページを開くとテレビやスマートフォンが描かれています。その画面の部分には穴が開いていて、次のページの一部がまるで切り取られた絵のように見えています。
穴はわたしたちを取り巻く世界を覗き見る窓のようなもの。せまい窓からは限られた景色しか見えませんが、窓をひろげる=ページをめくることで、それまで隠れていたものが姿を現すのです。
本書をきっかけに、物事をいろいろな方向から考え、冷静に情報を受け取る習慣を身につけていきましょう。
4月12日のおすすめ
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なぜ、人間だけが「ことば」を使うのだろう。作者はこのことを研究しています。飼っていた犬が子犬の頃「かわいいね」と言うと、毎回小声で「フフフーン」とまねするので、話せるようになるかもと思ったことがあります。
人間のことばと動物の鳴き声に共通する特徴(とくちょう)が、4つあります。
1.発声学習(声のまね)ができるのがオウムやイルカです。
2.デグー(ネズミ)の鳴き声には「意味(単語)」があります。
3.ジュウシマツの短い歌を組み合わせた歌作りは、文法と同じです。
4.集団の上下関係で鳴き方を変えるのがハダカデバネズミです。丁寧(ていねい)な 話し方は人と同じです。
「ことば」のヒントは赤ん坊の泣き方にありそうです。生まれたばかりのときは単調です。1カ月を過ぎる頃には「ミルク」「おしめ」と泣き方を変えて親に知らせます。さらに発声学習をして「ことば」を持ったと作者は考えました。
研究は「なぜ」と観察した気付きの積(つ)み重ねです。日常のなかに「なぜ」はあります。
4月5日のおすすめ
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大正時代の最後の年に生まれた桧山タミ先生は、93歳。昔ながらの暮らしの知恵や家庭料理を、長年にわたって伝えてきました。「歳をとるのが楽しい」と毎日元気に暮らしています。
昨年の春、「料理を作る仕事のことを知りたいです。学校にお話に来てください」という小学生からの手紙がきっかけで、母校で授業をすることになりました。「自分の未来は、料理と同じ。わからないことを少しずつ知りながら、自分らしい味を見つけていけばいい」好奇心でいっぱいの子どもたちに、たくさんのお話をされました。そして、30分という短い授業では語りきれなかった先生は、このお話の続きを書くことにしました。
料理を仕事にするまでのこと、幸せや豊かさとは何かなど、人として大切にしていきたい言葉があふれています。
「おいしくなあれ」は魔法のことば。心のこもった料理をいただいた時には、「ありがとう」と感謝の気持ちを言えますようにと、タミ先生は願っています。
3月29日のおすすめ
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11歳のリョウは、卵の中の楽園のような世界で穏やかに暮らしていました。卵の世界には特別なきまりがあります。この世界に生まれた者は13歳の誕生日までに、この世界を出るか、とどまるか、決断しなければならないのです。家族や友達とのことも考えながら、リョウが悩んで選択した先には過酷な運命が待っていました。果ての見えない平原を歩き続けたり、自分の気持ちを隠して他人の息子として暮らしたりする中で、リョウは自分自身と向き合うことになります。
みなさんもこの先、自分自身で決断することが増えるでしょう。時にはつらかったり苦しかったりするかもしれません。そんな経験の積み重ねが自分というものをつくっていくと思えたら、難しい決断も勇気を持ってできるのではないでしょうか。ぜひ読んでみてください。そして、大人になっていくみなさんが決断することを迷ったときには、このお話を思い出してみてください。